『ファントム』を観てきました~

芸術の秋ですね! 久しぶりの観劇は、城田優さん主演の『ファントム』でした!

軽く説明をしますと、『ファントム』はガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』を元にしたミュージカルで、映画化もされたアンドリュー・ロイド・ウェバー版『オペラ座の怪人』とは、また別の作品。

もちろんひずきはロイド・ウェバー版の映画も舞台も観ました。同じ小説を元にして、あの作品とどのような違いがあるのかなーという興味に胸をふくらませ、行ってきました赤坂ACTシアター! そしたらこんなステキな等身大(たぶん)パネルが出迎えてくれました!!

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わかりにくいかもしれませんが、顔の右半分に仮面をつけています

以下、これから観る予定がある人は読まない方がいいネタバレ含みますよ~

ロイド・ウェバー版のファントムは、優雅で冷酷、独善的なキャラクター。そのイメージが頭の中にあったので、それにこのビジュアルが加わるのであれば、こちらの『ファントム』でもさぞかしカッコいい怪人が観られるのだろうな! と期待にハァハァしながら幕が上がるのを待ちました。

そして、いよいよファントムの登場シーン! さぁ華麗に決めちゃって! …と待ち構えていたわけです。が。

ファントム、まさかの「僕」っ子でした…! Σ( ̄◇ ̄;)
いつもうつむきがちで、わがままなのにどこか自信のなさを感じさせる、ややコミュ障っぽい少年。しかもさらさら黒髪ストレート!(関係ない)

元劇場支配人・キャリエールと話をしている時、どこからともなく聞こえてきた声に「本当に幽霊がいる!?」とおびえ、「あれはオペラ座の新しい歌手だ」と説明されると、「え?」って顔をして「…でも歌えてないよ?」と途方にくれたように訊き返します。
想像してください。上の写真の人の話ですよ!? 別の意味でハァハァするわ!!

というのはまぁ冗談として。ロイド・ウェバー版と今回の『ファントム』との最大の差は、この、怪人をごく普通の人間として描いている点でしょう。生身の彼の物語は実に切ないものでした。

ある日彼は、劇場の隅でひっそりと歌うクリスティーヌに、生まれて初めての恋をします。そこから彼女の歌の教師となり、秘密の訓練をほどこすのはロイド・ウェバー版と同じ。

しばらくたったある日、オペラ座の前にあるビストロで新作のオーディションが行われることになり、ファントムはクリスティーヌにもそれに参加するよう勧めます。それはいいのですが、「僕は君の衣装も考えてあるんだ!」って。
え、ファントム、ちくちく衣装作ったの!? とちょっとツッコミw

そしてその後クリスティーヌは、ビストロでのオーディションに見事なドレスで登場するのです。やっぱり作ったんだ! ファントムったら夜なべしてちくちく裁縫したんだ! (*^◇^*)

そんな彼の献身と自分の努力が功を奏し、クリスティーヌは見事主役の座を射止めます。ですがその大舞台で、意地悪なプリマドンナ・カルロッタの嫌がらせにより、声が出なくなってしまうのです。

『自分の』オペラ座で、愛するクリスティーヌに最高の晴れ舞台を踏ませることを夢見ていたファントムは、この事件に大激怒。舞台の上から彼女をさらい、劇場の地下――自分の王国へと連れてきてしまいます。
彼の唯一の理解者である、元劇場支配人・キャリエールが彼女を連れ戻しに来るも耳を貸さず、
「彼女は裏切られた。もう一度裏切られるのを見過ごすくらいなら、死んだ方がマシだ!」
と、一生そこで彼女とふたり幸せに暮らすと決めてしまうのです。

一方純真なクリスティーヌも、「地上に戻るべきだ」というキャリエールの説得に耳を貸さず、そして彼が実はファントムの実の父親でありながら名乗り出ることができずにいる事実を知ると、ファントムの悲しい過去と、彼から受けた恩を思い、地下に残ると答えます。

結局キャリエールはクリスティーヌを残して去り、ファントムは幸せの絶頂に。

とはいえコミュ障のファントム君、好きな女の子と二人きりになると、どうしていいか分かりません。このへんの彼のがんばりが大変可愛かった!

「ピクニックに行こう! 森の中や沼のほとり。僕の住みかを案内するよ」
そう言ってワインとグラス、そしてお気に入りの詩集を入れたカゴを片手に、散歩に出かけるのです。乙女か! ヾ( ̄▽ ̄;)

インディ・ジョーンズばりの地下迷宮の背景も、ファントムのはしゃぎっぷりにかかると明るいお花畑のように見えてしまう不思議。

このピクニックでファントムの心は、彼女のことが好きで好きでたまらない気持ちと、自分のことを知って好きになってほしいという切望と、でも醜い本当の自分は知られたくないという葛藤の間で、休むことなく揺れ動きます。あますことなくそれを伝えてくる城田優さんの演技が見事でした!

けれど、自分の本当の姿を知れば彼女はきっと離れていくと信じ、頑なに隠そうとする彼へ、クリスティーヌは仮面を取って素顔を見せるようくり返し求めます。
「頼むから止めてくれ!」と苦しむファントムに「私を愛していないとおっしゃるなら、あきらめます」と言い、そして「私の愛しい人。どうか何もかも見せて」とそれはそれは優しく高らかに歌うのです。必死に拒み続けていたファントムも、これには陥落。

そしておそるおそる仮面を取ると……、クリスティーナは無言で走って逃げだした末、絹を引き裂くような悲鳴をあげるのです。

……ひでぇ……。

全力で傷をえぐられたファントムは絶望の叫びを上げ、しばらくのたうちまわるものの、やがて彼女を連れ戻すため地上へ向かいます。そしてそこで警官に撃たれてしまうのです。

地下に戻る途中で力尽きたファントム、ひそかにやってきたキャリエールに「彼女は悪くない。僕の姿が想像していたのと違っただけだ」とクリスティーヌをかばう。切ない…!
゚。(。ノд`゚)゚。

そんなファントムに、キャリエールは初めて自分が父親であることを打ち明けます。ファントムは「知っていた」と応じ、親子として、ひしと抱擁し合う――情感のこもった美しい歌が、…もっと前に打ち明けとけよ、というツッコミを吹き飛ばす感動的なシーンです。

しかしそんな胸に迫る父と息子のシーンも、クリスティーヌによってぶち壊しにされます。正確には、地下に戻る彼女についてきていた警吏たちによって。
彼女にそんなつもりはなかったのでしょうが、あんたって子は! 取り返しのつかないことばっかり!o(*≧д≦)o

そしてラスト、クリスティーヌは捕り物の最中にふたたび撃たれて瀕死のファントムに駆け寄り、彼の最期を看取るのです。
どのツラさげて まぁなんですか。様式美ってヤツですね。
少なくともファントムは、最後の最後で彼女と心を通わせ、その腕の中で幸せに眠ることができたので、よかったのではないでしょーか(棒読み)。

『You are the music』『Ave Maria』『Beautiful boy』等々、楽曲もとても印象的でした。ぜひCD化していただきたい!

でもあれですよね。やはり何よりインパクトがあったのは、少年のように純粋、かつ異様に女子力の高いファントムのキャラ設定。

オーディション前夜に、自分の作った衣装を身につけて歌うクリスティーヌの姿を想像し、遠くを眺めてうっとりとほほ笑みながら針を運ぶ怪人の姿が脳裏を横切りました
(*^◇^*)

ミュージカル『ファントム』公式サイト



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レディ、失礼ですがヒーローをお間違えではありませんか?

『レディ・ベス』を観てきましたー。

あの『エリザベート』や『モーツァルト!』を手がけたクンツェ(脚本・作詞)さん、リーヴァイ(作曲)さんコンビの新作、しかも本邦初公開どころか世界初演!

観に行かないわけないじゃないですか~!!

いつもは観劇してからリピートするかどうか決めるのですが、今回は観る前に2回分のチケットを取ってしまいましたとも。そして期待通り、すばらしく見応えのある舞台でした!

衣装がすごい! セットがすごい! 音楽がすごい! キャストがすごすぎる!
そしてイモーテルの存在感ハンパない!笑 (大人の事情?)

と、興奮しきり。特に歌は2、3日ずっと頭の中を回るくらい残りました。

物語はエリザベス(後のエリザベス1世)が、姉のメアリー女王治世下において不遇の時代を堪え忍び、女王に即位するまでの数年間を描いたもの。

以下、例によって思いきりネタバレあります。

ひっそりと隠遁生活を送っていたエリザベスは、ある日吟遊詩人のロビンと出会い、自由奔放な彼に初めての恋をします。

このあたりは特に、エリザベスがロビンに勧められ、男装してお忍びに出るシーンが楽しかったです!

その前に男らしい振る舞いを覚えようと、小柄な身体で「かかってこい!」「ぅおんどりゃ~!」と雄々しく手足を振りまわして練習する様が可愛くて可愛くて (≧▽≦)

それまでにない時間を過ごすうち、エリザベスはますますロビンに惹かれていき……と、ここまではよかったのですが。

ですがですね。

ワタクシこの物語おいて一点だけ、どうしても看過できないことがありまして。

すぅー。(大きく息を吸う音)

ヒロインのピンチを助けるのはヒーローじゃなきゃ、ダメー!! o(≧Д≦o)

…乙女小説書きとして、これは声を大にして言わせていただきましょう。

なにせロビンは、エリザベスが危機に陥っても何もできないばかりか、人質にされてしまうダメっ子ヒーロー。

それに比べて、物語がだいぶ進んでから、おもむろに、ばばーん! と登場するスペインのフェリペ王子。彼の役どころがカッコ良すぎて! ダメでしょあれは…!!

娼婦と戯れながらの華やかな登場で魅せたフェリペ王子(もろ肌脱いでいたのはサービスショットですよね分かります!)、眼差しやお言葉ひとつで苦もなくベスの命を救ってしまうのです(しかも3度も!)。

きわめつけは高貴な佇まい&すらりとしたお姿の中、ひたすら目立つカボチャパンツ!
惚れてまうがなぁぁぁ!! ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃

彼は権力、容姿、頭脳、野心と、すべてがそろった完全無欠の王子様(愛はないけどな!)

一方、色男ロビンは金も力も危機管理能力もなさすぎてもう……(愛だけはたっぷりだ!)

そういうわけで、ロビンと別れて女王として生きる道を選んだエリザベスが、政略結婚をふくめ一生結婚しないと決めてしまうのも、いまいち釈然としなかったといいますか。

恋と言えば、むしろメアリー女王の側近であるガーディナー司教の、スペイン大使ルナールへの切ない片想いの方が胸にせまってきました(※そういう話ではありません)。

ガーディナー司教の健気さ一途さに対し、ルナールのつれなさが徹底してて、ホント涙なしには観られません(※そういう話では…以下略)

それだけに、ベスを亡き者にしようと企むふたりが「あの女を消せ!」と意気投合して踊りまくるシーンは、司教様のハッスルっぷりが最高潮。司祭服の長ーい裾が一度も床につかないくらいの勢いで、くるくるくるくるまぁよく回ること!

…閑話休題。

あとは単純に個人的な好みなのですが、もう少しエリザベスが自力で自分の運命を変えるエピソードがあればよかったと思います。

姉のメアリー女王に虐げられても、司教に侮辱されても、ロンドン塔に収監されても、信念と誇りと心の自由を失わないベスの不屈さは物語の中で際立っていました。

それだけに、望まぬ状況を彼女自身の手でひっくり返す場面がないのが、やや物足りなかったかな…(ひっくり返すと歴史が変わってしまいかねないのですが、そこを何とか!)。

ちなみに件のカボチャ王子…いえいえフェリペ王子、この物語の後、エリザベスにプロポーズを断られた上、アルマダの海戦でたたき潰されちゃうんですよね。お気の毒…( ̄△ ̄;)


ミュージカル『レディ・ベス』公式サイト



『ダディ・ロング・レックス』を観てきました その2

ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』を観てきました~。…って、いつの話だ!?
はい、先月です!(なんでいつもひと月遅れるんだ!)

主演の坂本真綾さんがほぼ出ずっぱり&歌いっぱなしの作品で、とても負担がかかるせいか公演期間の短い作品だったにもかかわらず、奇跡的にチケットが取れたので、張り切って行ってまいりました!

まず、あらすじ です。

孤児院に暮らす18歳の少女ジルーシャ(坂本真綾)は、
ある夜、大学に進学し勉学を保証するという思いもかけない手紙を受け取る。
条件は、“月に一度手紙を書くこと”。
手紙の主は、その夜に見た、車のヘッドライトに照らされ、
まるで足長蜘蛛「ダディ・ロング・レッグズ」のような影、まさにその人だった。
影でしか見たことのない相手だったが、ジルーシャは心を躍らせ手紙を送り続けた。
影の正体であるジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)もまた、
知性ある手紙を毎回送ってくれる彼女に、惹かれていくのに時間はかからなかった。
(公式サイトより)

感想はひと言に尽きます。

坂本真綾さん、めっちゃくっちゃ可愛いかった…!!

なにがって、ヒロイン・ジルーシャの発想――やること、言うこと、考えることの可愛らしさもさることながら、表情豊かな熱演によって、ヒロイン像はキラキラまぶしいほど!

可愛いといっても、彼女は孤児院育ちの現実主義者なので、物事を見る目はとても鋭く、そしてシニカルでもあります。けれど基本、世の中を肯定的にとらえている彼女の感性というフィルターを通すと、それが思わず「くすっ」と笑いたくなる形で出てくるのです。坊ちゃまがすとーんと恋に落ちるのも分かるわー!(笑)

そんな彼女が、まったく無自覚に華麗にジャービスを振りまわしまくる様に笑いが止まりませんでした。

技術的なことはよくわからないのですが、坂本真綾さんは歌やセリフの緩急のつけ方がすごく上手で、ちょっとした言い方でとても気持ちの伝わってくるのです。

もちろんジャービス役の井上芳雄さんもすばらしかったです!!(あたりまえ)

そもそもお金持ちの御曹司ジャーヴィス・ペンドルトンという役自体がかなり残念なヒーローなのですが、その残念さをコミカルに、そして哀切をもって演じられていました。

えぇ、話が進めば進むほど、それはもう素晴らしいヘタレっぷりで…!
思わずファンレターを書いちゃいました(1コ下の記事)(*'◇'*)ゞ

彼がジルーシャとパリに行くために四苦八苦した末、見事なまでに自滅するあたりのドタバタは非常にテンポよく、笑いっぱなしでした。

もし再演されるなら、絶対また観に行きます!

舞台後のトークショーで井上さんがポロリしていらしたように、トリプルキャスト、クアトロキャストならもう少し長い期間やれるのではないでしょうか(笑)


どうでもいいのですが、公演後、簡単にとったメモの中でジャービスがところどころジャベールになっていたという……
作品ちがいまんがな!



『ダディ・ロング・レックス』を観てきました その1

拝啓 ジャービス・ペンドルトン様

ミュージカル『ダディ・ロング・レックス~足ながおじさんより~』を拝見しました。そして原作の小説では描かれていないあなたのお姿を目にして、とても新鮮な感動を覚えたため、思わず筆を執ってしまいました。

多くの人が知っている通り、あなたは孤児の少女ジルーシャを影ながら援助し、大学に通わせたわけですが、それはあなたがずっと手がけてきた慈善事業で、彼女はその内のひとりに過ぎなかったのですね。

そのジルーシャが、あんなにも感性豊かで個性的な手紙の書き手だというのは、あなたにとって予想外だったことでしょう。

本来、学業の進み具合を知るための報告のであるはずの手紙を、受け取るごとに心待ちにするようになり、気づけば仕事もそっちのけで読みふけり、内容に一喜一憂するようになるなどとは、最初は想像もしていなかったのではないでしょうか。

ジルーシャは自分の恩人であるダディ(足ながおじさん)を白髪の老人と思い込み、しきりに返事を求めてきましたね。けれどあなたは偏屈で人づきあいが苦手。自分はたまたま金持ちに生まれただけで、退屈な人間だという強いコンプレックスを持っていたために、ダディを尊敬し慕う彼女に語る言葉がなく、何度も手紙を書きかけてはゴミ箱に捨ててしまっていました。

その姿には年相応の自尊心の高さと不器用さがよく表れていて、あなたのキャラクターを原作よりもはるかに魅力的に感じました。

けれどジルーシャのことが気になってたまらなくなったあなたは、彼女の同級生・ジュリアの叔父としてわざわざ大学まで会いに行きましたね。あの時の取りすました態度は、彼女に手紙のひとつも書くことができなくてもだもだしていた人物と同じとはとても思えず、見ていてニマニマしてしまいました。

そうそう。ジルーシャが、ルームメイトのサリーやそのお兄さんと楽しくクリスマス休暇を過ごしたという手紙を読んで愕然とし、即座に『ジュリアの叔父のジャービスとして』彼女たちをニューヨークに招待し、「とても楽しかった!」という手紙を『ダディとして』受け取った時のあなたの、これ以上ないほど極上のドヤ顔は可愛くてたまりませんでした!(≧∀≦)=3

また、サリーやそのお兄さんから夏休みの誘いを受けたという手紙を読むや、猛然とタイプを打ち始め、『ダディの秘書として』その誘いを断り自分の知り合いの農園に行くよう指示したときには、なんて心のせまいヤツと思いましたが、その後、農園でひとりしょんぼりしている彼女のところに、『ジャービスとして』さも偶然ででもあるかのように現れ、ふたりで釣りや乗馬やハイキングを楽しんだ――その時のあなたの浮かれっぷりときたら見ていられないほどだったので、心のせまいヤツというのは取り消します。正しくは詰めの甘い策略家といったところでしょうか。

どのへんの詰めが甘いかと言えば、やはりアレです。

次の夏、ジルーシャと一緒にパリに行くべくあれこれ手をまわして準備をするものの、家庭教師のバイトを見つけていた彼女はその誘惑にあらがい、かたくなに首を振りました。そんな彼女を、あなたは腹立ちまぎれに「パリに行かないなんて、バカで間抜けで分からず屋で頑固な子供だ」となじり、完全に怒らせてしまったではありませんか。

その後、ダディの威光を頼りに『ダディの秘書として』彼女にパリ行きを勧める手紙を書くも一足遅く、文字通りの orz...。

ジャービー坊ちゃま。間抜けはあなたです。

この一件であなたは、彼女がすっかり自立して、ジャービスとしてもダディとしても思い通りにすることができなくなったと気づき、この先はただ彼女を見守ろうと決めたのでしたね。

けれどジルーシャは、ダディに会うことを決してあきらめませんでした。卒業後、小説家としてデビューした彼女は、ダディへ学費を返済したら孤児院の理事となってあなたに会う、と書き送ります。

このへんのジルーシャの成長っぷりはカッコよく、まぶしいばかりでした。対照的に、それに圧倒されっぱなしのあなたはどんどんヘタレに…( ̄▽ ̄;)

「ダディは私だ! 私なんだ!」と便せんに向けて訴えるものの、結局ペンを置いてそれをぐしゃぐしゃに丸めてしまう。ダディ=ジャベールと知ったとき、彼女がどれほど落胆するか、そしてずっと嘘をついていたことをどんなに怒るか、そう考えて心が萎えてしまったのでしょうね。

最後にあなたが歌う「チャリティー」という曲に、その気持ちが凝縮されていたと思います。助けていただけでなく、自分も多くを受け取っていた。ジルーシャは手紙を書くことで、あなたに多くを教え、与えていたのですね。

最後にダディとして会うためにジルーシャを待ち受ける場面ではもう、死刑宣告を受ける前の被告のような悲壮感に満ちていて、問い詰めるジルーシャにいちいち、うん、うんと大きくうなずく姿がかわいすぎて、思わず肩をたたいて励ましたくなりました。

とはいえその直後、「なんでそんなことしたの?」と訊ねる彼女に「君のせいだ!」と逆ギレしたのはどうかと思います。「君があまりにもおもしろい手紙を書いてよこすから、会ってみたくなったんだ。この激しく愛嬌のある生き物に(←笑)。なのに君はダディを白髪でヨボヨボの老人と思い込んでいるから、僕自身として会いにいったんじゃないか!」

…この場面では、この話ほんとにハッピーエンドになるのかとハラハラしてしまいましたですよ。
その後なんとか結果オーライになり、胸をなで下ろしました。

この舞台は、原作よりも二人の関係性や恋に焦点が当てられていて分かりやすく、また原作では手紙の中で語られているだけのあなたの生身としての姿を見ることができて、とてもおもしろかったです。

長丁場の二人芝居ということで、役者さん方は大変だと思いますが、ぜひ再演を希望します。

マジメでプライドが高く見栄っ張り。けれど一途で正直でどこかかわいい、あなたにまた会えることを祈りつつ。

かしこ


ミュージカル『モンテ・クリスト伯』

今年最後の観劇をしてまいりました~!
ミュージカル『モンテ・クリスト伯』、意外にも今回が日本初演という作品です。
モンテ・クリスト伯といえば、誰もが知ってる復讐の物語。いまはやりの半沢直樹ですよ、倍返し。
念のため、話を知らない方のためにあらすじを紹介すると…

あらすじ:
(19世紀初頭、フランス皇帝ナポレオンがエルバ島に流された頃。)
マルセイユの船乗りエドモンドは、船長昇格間近、恋人メルセデスとの結婚も間近と、幸福の絶頂にあった。
しかし彼を疎ましく思う者たちの策謀により、無実の罪で14年もの獄中生活を強いられる。またその間に父親は他界、婚約者も奪われるという憂き目に遭ってしまう。
獄中でファリア神父に出逢ったことで自分が陥れられたという真実を悟り、仇敵への復讐を決意する。同時に神父の知識を受け継ぎ、さらには莫大な財宝の在り処も教えられる。やがて神父が息を引き取ると、その遺体と入れ替わって脱獄に成功。
脱獄後に神父から授かったモンテ・クリスト島の財宝を見つけ、莫大な富を手に入れると、自身を陥れた者たちへの復讐の準備を開始するが・・・。
(wikipedia より)

といっても、実はわたしも原作を読んでいません! ですので以上のあらすじは知っていたのですが、その後のオチは知らないまま観に行きました。

以下、思いきりネタバレです。

幕が上がる前に、一緒に行った友人から海賊が出てくるらしいと聞き、いったい上記のあらすじのどこに海賊がからんでくるのかと思っていたら、脱獄して海をただようエドモンドを拾ったのが海賊だったのでした。
しかも首領はミニスカートの女海賊! 太ももセクシー!

彼女はエドモンドに、部下の海賊ジャコボと勝負をして、勝ったら船に乗せると言います。そして戦ったエドモンドは、神父に教えられた剣術を使って見事ジャコボを倒すのでした。いやここ気になるのはあれでしょ。
神父、あなた一体何者だったんですか!? 笑

ちなみに負けたジャコボは、強面(こわもて)でじぃっとエドモンドをにらみます。さてはライバル宣言? これで勝ったと思うなよ的な!? と構えていたら。
「今日から、あんたの敵はオレの敵だ! オレは、あんたの…と、友達になりたい…!」とまさかの告白ターイム!

でもそんな可愛らしい海賊に対しても、復讐で頭がいっぱいのエドモンドの反応は超クール。「そうか、友達か。(そんなことより)モンテ・クリスト島って知ってるか?」みたいな。しかも友達というよりも従者のように、いいように顎で使いまくり。それでもいやな顔ひとつ見せないジャコボは本当に人間ができてると思います。海賊ですが。

そう。彼に限らず海賊たちがいいヤツらなんですよ、もう。だってエドモンドがモンテ・クリスト島から財宝を運び出すのを手伝うんですよ? 私が首領だったら、彼を殺して財宝を自分たちのものにしますね!

ジャコボに至っては、財宝を前にしても「オレはあんたの友達ってだけで充分だ!」とエドモンドに向けて言い切りましたからね!(そして見事にスルーされてましたからね!笑) なんてけなげ!

…で、一幕はエドモンドによる復讐の舞台と役者がそろったところで終わります。となると幕間で聞こえてくる声は当然、「これから倍返しだ、倍返し…」「半沢直樹、半沢…」ざわ…ざわ…と。

もちろん私も期待しましたですよ。念入りかつ非情な復讐のシンフォニー。敵の苦しむ姿は蜜の味…!

二幕冒頭のメインは、エドモンド扮するモンテ・クリスト伯爵の屋敷で催されたパーティー。
招待を受けた客達は、やってきたはいいものの、誰も伯爵本人を知らない。ただとんでもない金持ちらしいという噂を聞くばかり。そして彼らはささやき合うのです。

金鉱を掘りあてたらしい、イタリアあたりの古い家柄らしい、オランダやベルギーの株で儲けたらしい等々。果ては少年を愛でているらしい、愛人宅につながる線路を敷いたらしい。アルプスの山をくりぬいて!

山をくりぬくよりも、愛人宅の隣に家を建てる方が面倒なくていいと思いまーす。…なんてまっとうなツッコミはさておいて、噂はどんどんエスカレート。
するとそこで、万を辞してモンテ・クリスト伯の登場!

……いやね、もちろんそう演出してるんだってことはわかります。でもここの登場シーンは、エドモンドが恰好よすぎるでしょう!!
丈の長ーい黒ビロードの上着を着て、大階段を貫禄たっぷりに降りてきます。上着の胸元と背中には銀糸でびっしりと刺繍が。衣装もステキすぎ!

そのパーティーには彼が復讐するべき三人の男達も招待されているのですが、挨拶しても誰一人としてすっかり変わってしまったエドモンドに気づかない。ただ一人、元恋人のメルセデスだけは気づくものの、人妻になった身では話もできず二人はそのまますれ違います。

これぞ復讐の序章とばかり、三人を見てほくそ笑むエドモンドを、すっかり召使いの衣装が定着したジャコボはいさめます。「これまでのことはすべて忘れて、これからの人生を歩んだらどうだ?」
ホント、海賊とは思えないほどいいヤツだ!

しかしそんな訴えもエドモンドには届きません。
さて。さてさてさて、来ましたよ復讐! とくと見せてもらいましょう、倍返し! …と思いきや。

あれ? 終わり? えぇー!?

復讐、10分で終わってしまいました。ねちねちと各個撃破するのかと思いきや、三人まとめてあっさり葬りさってしまう。反撃はほとんどなし!

どうやらこの作品の主題は、半沢…もとい復讐ではなかったようで。

その後、エドモンドの攻撃は敵のひとりであるモンデゴの息子、アルベールにまで及び、それを思いとどまるよう懇願するメルセデスをも退けます。

けれど最後、アルベールの婚約者ヴァレンティーヌが、アルベールをかばって「あなたは人を愛したことはないの!?」とエドモンドに迫ります。二人の姿にかつての自分とメルセデスを重ねたエドモンドは、若い恋人達から幸せを奪うことはできないと、ついに復讐を断念するのです。

そんな彼のところにメルセデスも戻ってきて、めでたしめでたし。ついでに戻ってきたモンデゴも、完膚無きまでにやっつけてめでたしめでたし。

この作品の主題は、愛と許しこそが人を幸せに導くということだったのでした。

…で、きれいに終わってもいいのですが。ラストシーンでどうしても気になることが!

エドモンドとモンデゴの戦いに割って入って怪我したジャコボ。フラフラの彼が去っていくとゆーのに、エドモンドは言葉ひとつかけるでもなし。労るなり、お礼言うなりさ~、と突っ込んでしまったのはわたしだけでしょうか…。

ジャコボの友情の一方通行っぷりが不憫すぎて泣けました。(オチそれ!? 笑)



プロフィール

ひずき優

Author:ひずき優
2月6日生まれ。
2007年度ロマン大賞入選。

変わり者が多いと言われる水瓶座、細かいことは気にしないO型。座右の銘は「果報は寝て待て」。今日も他力本願で生きています。


当サイトにおける全ての文章・写真の無断転載、記事への直リンクはお断りさせていただきます。またメールフォームのお返事には、しばらくお時間をいただく場合があります。ご了承くださいませ。

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