『ミッドナイト・イン・パリ』

ウディ・アレン監督の、いたずら心たっぷりな映画『ミッドナイト・イン・パリ』を見ました。

や、もともと映画はよく見るのですが、この作品は個人的にかなりツボをついてきたので紹介せずにいられないというか (*^_^*)

ざっとストーリーを説明すると、

ハリウッドの売れっ子脚本家ギルは、婚約者とあこがれの街パリにやって来た。作家への転身を目指すものの周りの理解を得られない彼は、一人街をさまよううち、12時の鐘の音とともに1920年代のパリに迷い込む……

という感じです。これのどこがツボかというと、まず主人公ギルの置かれている状況。

消費される脚本家に甘んじたくない彼は、あこがれのパリで小説の執筆にいそしもうとします。が、「稼ぎのいい売れっ子脚本家」と結婚したい婚約者は、そんな彼の思いをまったく理解しない。それどころか、何とか彼に小説執筆をあきらめさせようと、小説のアイディアを笑ったり、知り合いの大学教授に作品を読んで厳しく批評するよう頼んだりするのです。

もうこの冒頭のところで、「やめてっ。やさしくしてあげてぇぇっ」とどうでもいい共感を覚えてしまいます(笑)。

そんなわけで自信をなくしたギルは、一人で夜のパリを歩くうち、知らない車に乗せられ、知らない人達に囲まれて知らないパーティーに連れ込まれてしまう。

そこで知り合った青年は、自己紹介をするギルに右手を差し出し、さらりと言うのです。
「スコット・フィッツジェラルドだ。よろしく」

ここで私ものけぞりました。そう来るか! と。でも確かに1920年代のパリならいたはず。

ちなみにギルは自分が20年代に迷い込んだことに気づいていないので、「冗談にしてもできすぎてるね」と苦笑い。「ところでここはどこ?」と訊ねると、相手はこともなげに「パーティーのホストはジャン・コクトーだよ」

ギルは「ははは」と笑って返しながら、でもなんか周りの雰囲気とか、格好とかがおかしなーという顔。そのうち、また別のお店に連れて行かれてしまいます。

そこでフィッツジェラルドは、一人孤高に飲んでいるかっちょいい若者に声をかけるのです。フィッツジェラルドが紹介したギルへ、その若者は

「ヘミングウェイだ」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!(※個人的な趣味です)

リスペクトしまくりの偉大な作家を前にして、ギルも目がまん丸。「あなたの作品は全部読みました!!」と興奮して詰め寄ります。

そんな彼に、ヘミングウェイは端然と「戦争そのものだ。泥まみれの死は高潔ではない。だが潔く死ぬなら、その死は高潔かつ勇敢だ」。

…さすが先生! 小説執筆の姿勢も硬派そのものですね!(≧▽≦)

いかにもヘミングウェイらしいセリフに、ギルも超感動。「ででででできれば僕の小説を読んで意見をいただきたいのですが…!」と切り出します。

しかしそこは硬派なヘミングウェイ。依頼を「作家の意見など聞くな」と一刀両断し、「男らしくないぞ。堂々と胸を張れ。我こそ1番だと! 文句があるなら外に出ろ!」となぜかケンカを売ります。…が、その後で

「ガートルード・スタインに紹介してやる」。と急にデレる。

ギルは嬉しさのあまり浮き足立ちまくり、「いますぐホテルにある原稿を持ってきます!!!」と店から出たところ、残念ながら現代に戻ってきてしまうのでした。がっくりー。

しかし彼は負けないめげないあきらめない。

次の日の夜にはまた、びしっとスーツに身を包み、原稿を抱えて夜のパリへと出て行きます。そして12時の鐘が鳴ったとき、ヘミングウェイの乗った古いプジョーが現れ、彼をガートルード・スタインのサロンへ連れていくのです。

その車内で、スペイン内戦での経験を語るヘミングウェイに、ギルが「死が怖くはなかったのですか?」と訊ねると、ヘミングウェイはフッと笑い、「死を恐れたら書けん」。
その返答にギルはしびれまくり!(笑)

実際、ひたりと据えた目線を動かさず、わずかにほほ笑みながら淡々と話すヘミングウェイはかっこよすぎです。役者さん、GJ!!

スタインの屋敷に着くと、そこでは "La Baigneuse" というピカソの絵について、モデルの女性の美しさを客観的に描いているかどうか、スタインとピカソが激論の真っ最中。

それがこれなのですが…すみません。芸術的な素養のないわたしには、このシーンもウディ・アレン一流のコメディとしか思えません…。

Pablo+Picasso.jpg
Pablo Picasso “La baigneuse”(1928)

それはさておき、ギルはそこでモデルのアドリアナに一目惚れ。過去への行き方をマスターし、それから毎晩20年代へタイムスリップして彼女との仲を深めていくものの、婚約者のいることがバレてふられてしまいます。

途方に暮れるギルに声をかけたのは、サルバドール・ダリ。彼はサイの形状について語り、共に描こうと誘う。これもいかにもですね。シュールレアリストと書いて変人と読む。

アドリアナはヘミングウェイと二人でキリマンジャロへ旅立った末、破局して戻ってくる。ギルはめでたく彼女と復縁。しかしそんなある夜、二人は不思議な馬車に誘われ、19世紀末のベル・エポックの時代に迷い込みます。

アドリアナは「なんてすばらしいの! 夢のよう…」と感動し、二人はマキシムやムーラン・ルージュで楽しいひとときを過ごす。けれどそこで対面したゴーギャンやドガは、その時代を嘆き、ルネサンス期に生まれたかったと話す。

そこでギルは気づくのです。「『現在』って不満なものなんだ。だってそれが人生だから」

現代の人は20年代にあこがれ、20年代の人はベル・エポックの時代にあこがれ、ベル・エポックの時代の人も「昔はよかった」と懐古する――いつの時代も変わらずに繰り返されてきた「ここではないどこか」への憧れですね。

ギルはもちろん現代に戻り、そこで新しいスタートを切ります。軽妙洒脱で風刺のきいた楽しい映画でした。

日本で言えば、夏目漱石や森鴎外、与謝野晶子に囲まれるようなものですかね?? そう考えると、「僕の作品を読んで意見をください」と申し出たギル、勇者すぎます(笑)


『ミッドナイト・イン・パリ』公式HP


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プロフィール

ひずき優

Author:ひずき優
2月6日生まれ。
2007年度ロマン大賞入選。

変わり者が多いと言われる水瓶座、細かいことは気にしないO型。座右の銘は「果報は寝て待て」。今日も他力本願で生きています。


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